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about BANKSY by E-JIMA (2008)



E-JIMAが雑誌『remix』2008年6月号のブリストル特集用に書いたBANKSYについての文章。
文:E-JIMA

 ブリストルは英国グラフィティ・シーンの中心的な街だと評されることがあります。街にはいたるところに廃墟が、そして都市デザインも人のためではなく車を中心にしたようなところがあり、道路脇には看板があふれている。そして映画『ワイルド・スタイル』の上陸──ブリストルには“キャンバス”が無数にあったわけです。3D、インキー、ニック・ウォ-カーらが牽引役となり、多くのキッズがグラフィティに魅了され、スプレー缶を手にした。当時10歳くらいだったというバンクシーも、そんな中のひとりです。

 僕がバンクシーの作品に出会ったのは1997年、旅行と、雑誌『アフターアワーズ』での取材を兼ねてブリストルに訪れたときでした。ミサイルを背負った象のステンシルや、パラシュートで落下する豚のペイントなど、単純に「カッコイイな」と思って多数(ほぼ目にしたもの全て!)をフィルムに収めました。それらがバンクシーの作品だと分かるのは、それからしばらく後に雑誌に写真の一部が掲載され、ブリストルの友人たちから指摘されてからのこと。1999年の3度目のブリストル滞在では、個人的な慶事もあり友人がパーティを開いてくれて、そこに、友人でありその晩の主催のひとりでもあったムーンフラワーズのトビー・パスコ-が連れてきてくれたのが、バンクシーでした。彼は僕に「おめでとう」と、ハンドメイド・プリントのTシャツをプレゼントしてくれました。トビーは、80年代前半からジャッファという名前でグラフィティも描いていて、85年7月にブリストルで初めて開かれたグラフィティの展覧会にも、3Dやニック・ウォ-カーらに並んで参加していました。彼は当時、イーストンでバンクシーとフラットをシェアしていて、そんなわけで僕とバンクシーの距離も遠からず近からずという感じでした。だから、僕はバンクシーの名前をあちこちで(日本のテレビのゴールデンタイムにまで!)見る度に、トビーの事を思い出さずにいられません。彼がいなければ、僕にとってのバンクシーの魅力は今の何分の一にもならないだろうから。バンクシーがロンドンに活動の拠点を移す前、こんな風に有名になる前のことです。

 当時は、ブリストルのヒップホップ/ブレイクビーツ・レーベル、オンブレ作品のアートワークや、ショップでTシャツを販売していたりと、地元に根ざした活動を続けていたバンクシー。彼の作品は単純にカッコイイのだけれど、その絵にはユーモアやアイロニーが込められていて、個人的にそのセンスが好みでした。この頃、大手企業の依頼を蹴ったりというトピックも、僕の心に火を点けたものです。その後、彼は活動の拠点をロンドンへと移し、その後は歴史――というか、ものすごい勢いでバンクシーの名前が広がることになります。この頃から、バンクシー自身ではなく、彼を取り巻く環境に違和感を覚えたのは、偽らざる気持ちです(基本的に天の邪鬼な性格ではあるんですが)。

 余談ですが(僕には本当にどうでもよいことなのですが)、ゼロでかつて販売していたプリントの一部は「本物」であるという鑑定結果が、正規代理店を務める会社から出たそうです。でも、仮に「ゼロで購入した」と言っている人が居ても、その方が本当にゼロで購入したか否かは分かりませんよね? ましてや、その会社が言っていることがどこまで本当かどうかも、さらに書けば、バンクシーが権威に中指を立てるアーティストだとしたら、そんな“鑑定という権威”すら……。ね? それがバンクシーなのだと僕は思うのです。全てのものをまずは疑う――それが、こういう時代に必要な術であり、バンクシー最大のメッセージなのではないかと思います。

 あくまで個人的な意見として、僕は、彼の作品は街の中で雨風にさらされたり、部屋の中でタバコのヤニや手垢にまみれるものなのではないかと思っています。誰の手にも届くアート。“アート”という、ちょっと構えてしまいそうな分野、そしてそこに生まれる壁を、彼は破壊しようとしているのではないかと僕は思うのです。ゼロに貼っている、彼のステンシル作品は、ブリストルの彼のアトリエに残されていた物、要するにテスト作です。額にも入れずに無造作に貼っているのは、そんな気持ちも込めてのものです。だから、僕にとって最高のバンクシー作品は、ブリストルやロンドンのブリックレーンなどで見つけた彼のグラフィティやステンシルの記憶、その記録としての自分が撮影した写真です。

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